たいようブログ健康学

「手」「技」(マッサージ)の世界

「手技療法」という言葉を聞いたことありますか?

当院では、手技療法と書いてあるので、知ってるよという方もおられるとおもいますが、簡単に説明すると「マッサージ」です。

手技療法は、柔道整復術の一つで、「擦る」・「揉む」・「叩く」・「震わす」・「押す」といったような刺激を与える方法になります。

当院では「カイロプラクティック」もやっていますが、これもギリシャ語で「カイロ=手」「プラクティック=技術」なので、「手技」なんですね。

実は、「マッサージ」という言葉は、きちんと勉強をしている立場の人の場合、簡単には名乗れない名前なのです。

それは、日本の場合は、厚生労働省が認可する「あん摩マッサージ指圧師」という国家資格があります。

なので、日本の場合「マッサージ」という名称の施術ができるのは、「医師」「あん摩マッサージ指圧師」のみになります。理学療法士も医師の指示にもとづく場合のみ使えるそうです。

なので、私も、どんなことをするのかわかりやすい説明のために、マッサージという言葉を使ったりしますが、医療・治療の勉強を行っている人にとっては、簡単に使うことのできない言葉になっています。

そして、当院は整骨院なので、柔道整復術である手技療法を使わせていただいております。

では、この手技療法の効果は?今回は、手技療法についてお話ししていきます。

手技療法の科学的根拠

手技療法をうけて、「楽になった〜」「痛みがなくなった」「揉み返しが出た」という経験をされた方もいらっしゃると思います。

中には、「(手技療法をうけても)効かない」という声もあります。

実際、手技療法を受けることによって、自分達の身体にどのような反応が起こっているのか?

気になりますよね!これを理解することで、なぜ効果が出たのか!なぜ効果が出ないのか?が分かります。

その辺りの疑問を踏まえ、研究や論文をもとに手技療法を紐解いていきましょう。

マッサージによる身体的影響

身体には刺激を受け取るセンサーがあります。

ボールが飛んできて体に当たったら「痛い」とか、熱いものにあたったら「熱い」とか感じますよね。

誰かに触られたり、服をきている時も、服を来ている感覚がわかると思います。触られた感覚が分かるのは、皮膚や真皮などの表層部に「触圧覚」という受容器(センサー)がありるからです。

そして、受容器は皮膚だけでなく、筋肉にも「筋紡錘」や「ゴルジ腱器官」というものがあり、筋肉の長さや張力を感知する受容器(センサー)があります。

それぞれのセンサーが受け取った情報は、神経を介して脳に伝えられ、その結果、今自分たちの体に何が起こっているのか理解し、それに対した対応を行うことができます。

身体のセンサーは皮膚と筋肉に多くありますが、その中でも皮膚のセンサーは、少しの刺激でも身体にいろいろな変化を起こすことができます。

この力を活用したのが、手技療法になります。

アルント・シュルツの刺激法則

皮膚のセンサーは、少しの刺激で身体に様々な変化をもたらしますが、どれくらいの刺激でどのような変化をもたらすのでしょうか?

これに関して、まとめたのが「アルント・シュルツの刺激法則」になります。

アルント・シュルツの法則とは、各種刺激によって、身体がどのような反応を起こすのか説明する理論で、刺激量によって生体反応が異なるよ〜ということを唱えた法則です。

詳しく説明すると

①ごく弱い刺激を与えると生体機能は鼓舞する。

②中程度の刺激を与えると生体機能は亢進する。 

③強い刺激を与えると生体機能は抑制される。

④さらに強い刺激をあたえると生体機能は制止される。

これをまとめると

「弱い刺激は筋肉の働きをよくすることができ、強い刺激は、筋肉の働きを抑えることができる。」

ということです。

つまり、筋肉の機能が低下しているときには、弱い刺激を与えて、活性化させる

筋肉が緊張しているときには、強い刺激を与えて、機能を抑制させようということになりますが、気をつけないといけないのが、強い刺激は、筋肉や神経などの組織を傷つけてしまう可能性があります。

なので、あくまで体感的なものになります。

たとえば、筋肉が緊張している人は、少し筋肉を押さえるだけでも、痛みを感じます。

なので、ここでは、痛気持ちいいぐらいで、手技療法をうけるのがおすすめです。

逆に、筋肉が硬くなり組織の機能が低下している場合は、強く押さえても感じにくい場合があります。

とはいっても、組織の機能亢進が大切なので、弱い刺激で手技療法をうけるのがおすすめです。

自分の目的に合った強さで、手技療法をうけるのが大切なので、ぜひ覚えておいてください。

とは言っても、よくわからないという方は、中程度(心地よい程度)の刺激量が身体にとっては一番無難な刺激だと思います。



手技療法がもたらす5つの作用

手技療法を行うことで、さまざまな身体的影響をあたえます。

大きくわけると以下の5つの作用を身体にもたらします。

①働きを抑える作用(鎮静作用) 

②働きを促す作用(興奮作用)

③体の内側の不調を調整する作用(反射作用)

④炎症を改善させる作用(誘導作用)

⑤関節の動きをよくする作用(矯正作用)

一つ一つみていきましょう!

①働きを抑える作用(鎮静作用)

働き過ぎて固まっている筋肉や神経に対してアプローチすることにより、働きを抑える作用です。

たとえば、一日中同じ姿勢をずっと保っていると筋肉が緊張してしまいます。一時的に同じ姿勢が続いている場合は問題ないのですが、長時間同じ姿勢が続いてしまうと、筋肉が過緊張状態になり、少し動いたぐらいでは解除することができません。

この状態を解除させるためには、外部からの刺激により、筋肉の緊張状態を緩める必要があります。

この作用を引き出すために必要な強さは、ある程度の強さ「痛気持ちいいと感じる程度」が理想です。

一般的な筋肉の凝り・神経痛、知覚過敏、筋肉痛などに利用します。

②働きを促す作用(興奮作用)

元気がなくなっている神経や筋肉に手技療法をおこなうことによって、元気を取りもどさせる作用です。

例えば、脳卒中などの病気になり運動麻痺や知覚鈍麻となり、神経や筋肉の働きが低下しているときに有効です。

そしてこの手技には、弱い刺激で短時間で行うことが効果的です。

③体の内側の不調を調整する作用(反射作用)

これは、神経や筋肉に刺激をすることによって、神経や筋肉のつながりを介して、体の内部の不調を調整することを期待する作用です。

興奮作用と鎮静作用の両方の効果が期待できます。

体の不調は表面に出ることがあります。逆にその部位を刺激することにより、体の内側の不調を改善させる作用です。

④炎症を改善させる作用(誘導作用)

ケガをして傷ついたり、腫れているときにその患部を触らずに、その部分より心臓に近い部位を刺激していきます。それにより、血液や滲出液を誘導して炎症症状を改善させることを期待する作用です。

この作用は、打撲や捻挫、むくみの際の治療に応用します。

⑤関節の動きをよくする作用(矯正作用)

関節の可動域(身体の柔軟性)が低下する原因に、その関節の組織内の圧力(内圧)が高まっている可能性があります。

内部にリンパ液が滞ることで、組織内の圧力が上がってきます。関節周りの組織には、センサーがたくさんあるので、組織内の圧力が上がるだけでも、身体には様々な影響を及ぼします。

なおで、手技療法を用いて受容器に働きかけることで、組織の内圧を減少させ、可動域を向上させることもできます。

関節の動きが正常でない場合、その動きを阻害している滲出物の吸収を促したり、関節周囲の筋肉や腱、じん帯の癒着をはがして、動きをよくします。

手技療法の持続性

肩や腰がしんどくてマッサージをうけても、次の日には元に戻っているという経験をされたことはありませんか?

ある研究では、「ある部位に刺激を加えることにより、健常者の関節において関節角度の増加が生じ、反応に持続性(平均20時間) がある」という報告があります。

つまり、手技療法をうけて、その恩恵に預かることができるのは、約20時間

それを過ぎると、身体的影響は少なくなるということです。

なので、体の不調の原因にもよりますが、生活習慣が影響により症状が起こっている場合は、生活習慣になにかしらの変化を起こさない限り、時間が経てば元に戻る可能性があります。

これが、元に戻る原因になります。

では、どのように生活習慣を改善させるかというと、やはり運動(ストレッチ)を行うこと

すぐ戻るのであれば、戻るまでにストレッチを行うこと

これが、一番重要です。

なので、当院では、運動療法も治療に取り入れ、自宅でもできるストレッチや、姿勢指導をさせていただいています。

まとめ

手技療法は、確かに体に対して、自然治癒能力を向上させ、組織の回復を促進させる効果があります。

しかし、刺激の強さや時間によって、効果の出方はかなり変わってきます。

また、万能治療というものでもないため、治療目的に合わせて、手技治療と、他の治療を組み合わせて相乗効果を引き出すことも重要です。

さらに、刺激の持続時間も考慮し、治療効果が持続しやすいように、定期的に行っていく必要があります。

健康な体づくりから、健康な体の維持を行うためには、欠かせない治療であることは間違いないので、ぜひ、皆さんも手技治療をうけて、元気な体をつくっていきましょう!

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