たいようブログ

腹式呼吸ができなくても大丈夫?胸・お腹・背中を使う呼吸のポイント

先日、患者さまから、

「腹式呼吸がうまくできません」

というご相談がありました。

本やインターネットを見ると、「呼吸は腹式呼吸がよい」と書かれていることも多いため、腹式呼吸ができないと不安になる方もいらっしゃると思います。

しかし、結論からいうと、普段の呼吸で「腹式呼吸か、胸式呼吸か」を必要以上に考える必要はありません。

大切なのは、胸・お腹・背中を含めた体幹全体が無理なく動き、楽に呼吸できていることです。

腹式呼吸と胸式呼吸、どちらが正しい?

呼吸をするとき、中心となって働くのが横隔膜です。

息を吸うと横隔膜が下がり、胸の中の空間が広がります。それに伴って、肋骨や胸郭が前後左右に広がり、お腹も自然にふくらみます。

そのため、呼吸は「胸だけ」「お腹だけ」と分けるものではなく、胸郭とお腹が連動して起こるものです。

腹式呼吸ができないから悪い、胸が動くから緊張している、と単純に判断することはできません。

まずは「どこを動かすか」よりも、「力まずに呼吸できているか」を大切にしてみてください。

呼吸では、背中側も動いています

「背中呼吸」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

これは一般的な医学用語ではありませんが、息を吸ったときに背中側の肋骨や胸郭が広がる感覚を表す言葉として使われることがあります。

少し専門的な話になりますが、呼吸管理に関する医学文献では、仰向けになった状態で胸骨から背骨までを前後半分に分けると、肺組織の約60%が背中側半分に位置すると報告されています。

ただし、これは「肺の表面積の60%」という意味ではなく、「背中呼吸が一番優れている」という意味でもありません。

大切なのは、お腹や胸だけでなく、背中側にも肺や胸郭が広がる余地があるということです。

全力で走った後、なぜ前かがみになるの?

全力疾走した後を思い出してみてください。

多くの方が、手を膝や太ももについて、少し前かがみになりながら「ゼーゼー、ハーハー」と呼吸を整えると思います。

この姿勢は「背中だけで呼吸している」のではありません。

腕を支えることで肩まわりが安定し、胸郭や呼吸を助ける筋肉が働きやすくなります。また、前かがみになることで横隔膜の働き方も変わり、呼吸を整えやすくなる場合があります。

実際に前かがみの姿勢は、呼吸器疾患のある方の息苦しさを軽減する姿勢としても研究されています。

胸・お腹・背中の動きを確認してみましょう

これは呼吸の良し悪しを決める検査ではなく、自分の呼吸に気づくための簡単なセルフチェックです。

まず、椅子に楽に座るか、仰向けに寝てください。

片方の手を胸の中央に置き、もう片方の手をおへそのあたりに置きます。

目を閉じた方が動きを感じやすい場合は、軽く目を閉じてください。目を開けたままでも問題ありません。

そのまま、普段どおりの呼吸を3~5回繰り返してみましょう。

息を吸ったときに、胸やお腹が自然に広がっているでしょうか。

息を吐いたときには、胸やお腹がゆっくり元に戻っているでしょうか。

次に、両手を左右の下の肋骨に当ててみます。可能であれば、少し背中側まで手を回してください。

息を吸ったときに、肋骨が横や背中側にも少し広がる感覚があれば、体幹全体を使った呼吸を感じやすくなります。

動きを感じにくくても、すぐに「呼吸が悪い」と判断する必要はありません。姿勢や手を当てる位置によっても、感じ方は変わります。

リラックスしたいときの呼吸方法

呼吸は普段、自律神経によって無意識に続いていますが、自分の意思でも速さや深さを変えられる、数少ない体の働きの一つです。

ゆっくりとした呼吸は、体と心を落ち着ける助けになると考えられています。

寝る前や、ジャーナリング・瞑想を始める前には、次のような呼吸を試してみてください。

  1. 楽な姿勢になります
  2. 鼻から無理なく息を吸います
  3. 吸うときよりも少し時間をかけて、ゆっくり息を吐きます
  4. これを5回ほど繰り返します

たとえば、「3秒で吸って、4~6秒で吐く」くらいから始めてもよいでしょう。

ただし、秒数や割合に絶対的な正解はありません。吐く時間を必ず吸う時間の2倍にする必要もありません。

肺の中の空気を無理に全部出そうとせず、苦しくない範囲で、細く長く吐くことを意識してください。

息を吐けば、次の息は自然に入ってきます。

「大きく吸わなければ」と頑張るよりも、「力を抜いて、ゆっくり吐く」ことから始める方が取り組みやすいと思います。

途中でめまいや息苦しさを感じた場合は、すぐに中止して普段の呼吸に戻してください。

呼吸は、体と心を整える接点です

深呼吸だけで、すべての疲労が取れるわけではありません。

それでも、自分の呼吸に意識を向け、ゆっくり呼吸する時間をつくることは、緊張を緩めたり、眠る前に気持ちを落ち着けたりする助けになります。

体を整えるときにも、心を整えるときにも、呼吸は大切な接点です。

腹式呼吸や胸式呼吸という言葉にとらわれすぎず、

「息を吸ったときに体幹全体がやさしく広がる」

「息を吐いたときに体幹全体がゆっくりしぼむ」

そのくらいの感覚で十分です。

ぜひ、毎日の生活の中で、1分間だけでも自分の呼吸を感じる時間をつくってみてください。

深呼吸がしづらいと感じる方へ

深呼吸がしづらい場合、姿勢や胸郭の硬さ、背中まわりの柔軟性、体に入っている力などが関係していることもあります。

整骨鍼灸院たいようでは、姿勢や背骨・胸郭の動きなどを確認し、その方に合ったストレッチやセルフケアをご提案しています。

ただし、呼吸のしづらさには、鼻や気管支、肺、心臓などの病気が関係している場合もあります。

息苦しさが続く、胸が痛い、ゼーゼーする、動悸やめまいがある、急に呼吸が苦しくなったといった場合は、セルフケアだけで判断せず、医療機関を受診してください。


この記事を書いた人

金本 尚也

整骨鍼灸院たいよう 院長
柔道整復師・はり師・きゅう師
整え塾 メンタルトレーナー・予祝講師

「体・心・場を整え、人生の可能性をひらく」をテーマに、動ける健康な身体づくりをサポートしています。

参考資料

※参考資料は2026年8月25日に内容を確認しています。

コメント